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最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)195号 判決 1948年6月03日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人の上告趣旨について。

しかし、衆議院議員選擧法第一一二條第一項第一號所定の金錢供與罪又はその申込罪は候補者の當選を得る目的で選擧人又は選擧運動者に對し金錢を供與し又はその供與の申込を爲せば直に成立するものであって、その供與し若しくはその申込をした金錢に對し正當の處分權限を有すると否とを問ふものではない。それ故原判決がその選擧違反罪の判示において候補者たる被告人細野国藏の當選を得させる目的で選擧人に對し投票及び選擧運動を依頼しその報酬として金錢を供與し又は供與の申込を爲したと認定しながら、その金錢に對する横領罪の無罪理由において右金錢の供與は社金を慰労金として支出する正當權限に基き支出したものであるから横領罪を構成しない旨説示したからと言って所論のように金錢供與罪又はその申込罪の理由に不合理乃至不備の違法ありといゝ得ない。論旨は結局金錢供與の趣旨につき原審の認定と異る見解の下に理由の不備を主張するものに過ぎないから到底採用するを得ない。

よって刑訴第四四六條により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 岩松三郎)

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